隣の部屋と格差社会。


「恵美ちゃんのお母さん来ましたー!」


静かだった教室に、元気な声が響いた。

同じ遅番だった晴日先生の声だ。


「すみません、遅くなりました!」


晴日先生の後ろから息を切らせてやって来たのは、


「お母さん!」


恵美ちゃんのお母さんだ。


初めて恵美ちゃんのお母さんに会ったけど、驚いた。すごく美人だ。女優さんみたい。


吸い込まれそうな大きな目は、綺麗にアイメイクが施され、真っ赤なルージュののった魅惑的な唇は、とても6歳の娘がいるとは思えない。


でも、


「みてみて!菖蒲先生がやってくれたんだよ。」

「わあ、すごい。恵美、プリンセスみたいだよ。」


恵美ちゃんにそっくりだ。いや、恵美ちゃんがお母さんに似てるのか。


素敵なお母さんだな。
自分の力で恵美ちゃんを立派に育ててる。


そんな微笑ましい親子を見送ると、ようやく今日の仕事が終わった。


< 80 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop