岡崎くんの恋愛塾

女好きとムードメーカー

「仁科ーー! がんばれーっ」

「いけーっ、たいせー!」



三限の時間。テニスコートに響く女子の声には必ず『仁科』と『岡崎』関連のキーワードが含まれる。


体育が男女合同だとしても、授業自体は別々。

だが網をまたげばそこには男子。 あの校内で人気の二人、仁科海人と岡崎泰正がいれば女子はみんなキャーキャー叫ぶ。




女子はまだゲームしてないからいいけど⋯⋯。
みんなやるだけやったら男子の方行っちゃうんだもんなぁ。



「⋯⋯佳奈見に行きたかったらいってもいいよ⋯⋯?」


気を遣うつもりでそう聞いたが、彼女は興味が無い方の人で、「別にいいよ」と笑顔で応える。
佳奈がいなかったら今頃一人でボールついてたんだろうな、と改めて感謝をした。





ラリーの練習をしていると、突然男子のコートの方向から女子の黄色い声が飛び出した。 まるで悲鳴。



「岡崎くんかっこいいー!!」

「海人ぉー! ハイタッチ!」



チラッと目線を移すと、男子のゲームが終わったらしい。
運動神経のいい仁科&岡崎ペアの圧勝。 テニス部がいないのが救いだったな。



ある女子生徒のハイタッチの声にサービル精神が強い仁科が反応して、わざわざ女子コートに入ってくる。


すると、応援していた女子生徒全員と笑顔でハイタッチをしてゆく。
地味系の応援が出来なかった子にも手を差し出す。みんな、満更でもない顔だ。



ーー私はというと。



「わっ、夏希!?」



そりゃ〝逃げる〟という選択肢しかないわけで。


ムリだよ近付けないって!


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