ミチオ
迷いに迷ってその個展に行ってみることにした。


今日、最終日だって言ってたし。


時間的に間に合わないかもしれなかったけど、知りたかったから。


ミチオを。


ちゃんと知ろうと思ったから。


例え、ミチオが私の事を知ろうと思わなくても、


私はそうしたかった。


ギャラリーに着いたとき、飛び込んできたのはCLOSEの文字。


そっか。


だよね。


遅かったもん。


ただ、なんだか動けなくてその場から。


だけど、既に搬出作業も終わったような状態のギャラリーの前でいつまでもいる訳にいかない。


良かったじゃん。


ミチオがただの道案内の上手い人ってだけじゃなくて、写真家菱田 満って知れただけでも。


「帰ろ。」


その時、CLOSEの札が掛かっていたドアが開いた。


その瞬間、胸が締め付けられる思いがした。


苦しいくらいに。


会いたくて仕方ない人。


愛しい人。


肌の温もりを今でも覚えてる。


だけど、


その扉から出てきた人物は知らない女の人だった。


同時にざわつきが私の心を黒く塗りつぶすのを感じた。





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