あの春、君と出逢ったこと







そう言って子供っぽい笑みを浮かべたお母さんが、腕まくりをして私に向かってウィンクしてみせる。



『今日は私の手作りハンバーグだから、たくさん食べないと許さないわよ⁇』




自信満々にそう言ったお母さんに、思わず笑みをこぼしながら頷く。



『もちろん!』





お母さんと会うのは久しぶりだから、本当に嬉しい。



ルンルンでキッチンに戻っていったお母さんの後ろ姿を見て、口元に笑みを浮かべる。



『お母さん、ハンバーグ焦がさないでよ!』


『分かってるわ‼︎』


久しぶりに、キッチンに立つお母さんの後ろ姿をソファーから眺める。


……そういえば、林間学校の事、伝えてなかったや。




『ね、お母さん』


『ちょっと、今忙しくて……‼︎』



私に返事をすると同時に、ハンバーグの裏返しに失敗して、形の崩れたハンバーグを見たお母さんが、慌てて形を整える。




『聞くだけでいいから。


私ね、明日、学校の行事で林間学校があるの』




『そうなの?』


『うん』



……あれ? なんか、反応薄いよね?


もっと固まるとかなんとかなると思ったんだけどな。


私の言葉を軽く受け流して、料理を続けるお母さんを見てそう思う。



まぁ、確かに、高校生になってまで、林間学校の事を伝えなくても大丈夫か。



『琹莉、机用意してちょうだい‼︎』



そろそろ出来上がるのか、フライパンの中身を凝視しながらお母さんがそういう。



……お母さん、そんなにフライパンに顔近づけたら、絶対顔熱いよね?


気になるけど、話しかけたら怒られそうだし、やめとこうかな。




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