あの春、君と出逢ったこと




私の名前を叫んだ翠は、いつの間にか秋さんからボールを奪い取り、リングまで猛スピードで駆け抜ける。



……これ、私の名前呼んだ意味ないよね?







名前のことを疑問に思いながらも、外した時のボールを取るため、急いで私も翠の方に走る。





勢いよく翠の打ったシュートは、ガコンッと音を立て、リングに跳ね返っていく。





『……っと!』



秋さんが取ろうとしていたボールを先に取り、もう一度翠にボールを回す。





もう一度打った翠のシュートが、今度こそ綺麗にリングに吸い込まれていったのと同時に、ホイッスルが鳴り響く。





『夏川&朝倉1回戦突破‼︎』





そう言った山先生の言葉に、見ていたみんなが私達に拍手を送る。





『……翠、勝っちゃたね』


『そうね』



あまりの拍手に顔が引きつっているのを感じながらも、一応笑顔で返す私の言葉に、翠も同じようにしながら頷く。



そんな私達の元へ、バスケットボールを片手で持ちながら、秋さんと春さんが歩いてくるのが見え少し身構える。



『夏川、お前もバスケできるんだな!』



『完敗ですよ、上手ですね、と2人とも』



そんな私の心情とは裏腹に、笑顔でそう言った秋さんと春さんに驚いてしまう。



『……え?』



『一応言っておくけど、これと勝負は別物だからな‼︎』



私に向かってそう宣言するように言った秋さんに首を傾げる。



……何のことを言ってるんだろう?




首を傾げる私を見て、秋さんも同じように首を傾げて見せる。




『何やってるのよ、栞莉』


『何やってるんですが、秋』




私と秋さんに注意した春さんと翠の声がハモり、私と秋さんは顔を見合わせて笑う。




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