あの春、君と出逢ったこと
『お前の方がムカつく』
不機嫌さマックスでそう言って私から顔を背けた煌君に、声を出さないように肩を震わせる。
煌君、いつもは大体無表情でクールだけど、結構子供っぽい所もあるんだよね。
最初の頃よりも、煌君の色んな表情見てきたし。
無表情ってよりは、少し笑ってる顔の方が印象強い気がする。
そんな事を考えながら笑いをこらえていた私の視界の端に、翠と快斗君が映る。
『栞莉。
こいつ、どうにかしてくれないかしら』
私を呼びながら、顔をそらした煌君を見て呆れたように溜息をついた翠が、こいつ。と言って快斗君の背中を押しだす。
『どうにかって……』
勢いよく前に突き出された快斗君を見て、苦笑いを浮かべる。
目の前の快斗君は、いつもの快斗君とは違って、元気さがなく、落ち込んでいる事がわかるくらい、どんよりとしたオーラを放っていた。
どうにかって言われても、ここまでだと、かける言葉が見つからないんだよね……。
『それと、何で煌まで不機嫌なのよ』
面倒くさいという気持ちがこもった声色で、私から顔を背けている煌君をみて翠がそういう。
煌君については、私のせい……なの??
何かした記憶は特にないんだけどね……。
『煌も快斗も……全く、男って生き物は本当メンタルが弱いわね』
呆れるわ。と付け加えた翠が、煌君と快斗君をみて腕を組みながらそう言う。
そんな翠に苦笑いを返し、快斗君をみて頭を悩ませる。
……こういう時、なんていえばいいの?
ドンマイだったね。とか、大丈夫だよ。とか?
煌君なら何とかできそうだけど、その煌君も顔そらして不機嫌マックスだから、お願いしにくい状況だし……。
ちらっと隣の席に視線を移すと、未だに私から顔を背け続けている煌君が視界に入る。
そもそも、からかったくらいで不機嫌になるところは、確かに翠の言う通りメンタルが弱いって事なのかな?