妻に、母に、そして家族になる
助手席側のドアを開けて乗り込むと、柑橘系の芳香剤のいい香りがした。

あまり助手席に座ったことがないから緊張してしまう。

それに隣が信濃さんだから更に緊張する。

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ。ハル、準備はいいか?」

「うん」

信濃さんはチャイルドシートに座ったハルくんをバックミラー越しに確認すると、ゆっくり車を発進させる。

彼の運転はとても丁寧で、赤信号に止まる時や、一時停止の時も衝撃が無くて、安心して乗ることができた。

目的地の回転寿司屋は駅から車で三十分程の場所にある。

車内でハルくんや信濃さんと他愛のない話をしていたら、あっという間に到着してしまった。

回転寿司屋の駐車場にはすでに多くの車が止まっていて、空車スペースは一つしかない。

信濃さんはその空車スペースにバックで入れてしまう。

その動きはまるで車が吸い込まれていくようだった。
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