新月の王 Ⅰ
柊哉が俺の名前を呼ぶから、こういう時は俺の役目。あんまり玲央ちゃんには見せたくないんだけどな。


俺の冷酷な部分、玲央ちゃんならもう気付いてるか。


やっぱり怒鳴っても、玲央ちゃんはピクリとも動じない。目の前のこの女は震えあがってるのにね?


そんな俺の冷たい声に割って入ってくる玲央ちゃん。どれだけ真っ直ぐなんだ。


玲央ちゃんの一言一句を聞いてると、自分が惨めに思えてくるね。


一人で来たから卑怯じゃない?


ちゃんと思いは伝えろって?俺らに告っても無理だからこうやって来てるのに?


玲央ちゃんは真っ直ぐ過ぎてたまに残酷な事を言うね。


今日の件もそうだし、今までの件もそうだけど、誰に何を言われても自分の思った事を言葉にして、自分のやりたい事をやる。
それが例え間違いだとしても、玲央ちゃんは後悔せず次の手を考えるんだと思う。


真っ直ぐ過ぎて、俺には強すぎるな・・・玲央ちゃんは。

なのに、あんな寂しそうに自分の拳を見つめて、あの女の方が綺麗だと思ってるんだ。それとも止められない自分を見てるの?そう思うと何故だか苦しくなるね。


玲央ちゃんが喧嘩をする理由・・・


喧嘩をしなきゃならない理由・・・


強くならなきゃならなかった理由・・・


無茶をしなきゃならない理由・・・


夜眠れない理由・・・


止められなくなる理由・・・


君を苦しめるのは一体何?

碧 side end
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