夏の日、僕は君の運命を変える
第4章 28年7月1日







「春沢さ」




テスト週間が始まり、全ての部活が停止になった初日。

帰ろうと席を立とうとすると、隣の奥村に話しかけられた。



「放課後、暇?」

「え?」

「えっと…一緒にテスト勉強しねぇ?」

「ど、どうしたのいきなり…」



毎回のテスト順位でトップ5に入っている成績優秀者が何でわたしに?



「国語、今回長文読解多いじゃん」

「多いね」

「俺、長文読解苦手…なんだよな」

「あ、そうなの」

「毎回国語は春沢がトップじゃん。
だから、教えてもらいたいなって…忙しいよな?」

「ううん平気。わたしで良ければ」

「マジか…!よっしゃ!これで太田(おおた)に勝てる!」

「え?」



太田は奥村と同じく2年で同じクラスになった男子。

奥村と仲が良いサッカー部員で、明るいムードメーカー的存在だ。

癖っ毛らしく、梅雨時には頭が実験後みたいに爆発していて大変そうにしていたのを思い出す。



「あー、俺文系苦手で、国語だけ毎回太田に負けるんだ。
それがずっと嫌で…」

「それで勝てるって言っていたんだね?」

「そう。
国語トップの春沢を味方につけたらこっちのもんだ」



喜んでいる奥村を見て、わたしはふふっと笑う。

クールなイメージがあったし、周りからの評判もクールだったけど、実際は結構明るいキャラなのかも。



「どこで勉強する?」

「涼しい所が良いけど…」

「じゃあ公民館とか行ってみる?」

「そうだな!」



希和は「テスト勉強しなくちゃ赤点だ!」と行って急いで帰ってしまったので、わたしは奥村と一緒にふたりで公民館を目指した。




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