夏の日、僕は君の運命を変える






担任から個別に配られたテストに赤点はなくて。

不安だった理数系の教科も英語も、赤点じゃなくてほっとする。

赤点を取らなかったのは、奥村のお蔭かな。



「奥村」

「ん」

「ありがとう。色々教えてくれて。赤点なかったよ」

「お礼を言うのは俺の方だ。
国語、太田に勝つこと出来たんだ」

「そうなの?良かったね、おめでとう」

「春沢のお蔭だ。ありがとうな」



にこっと笑う奥村。

二重の瞳が細くなり、結構かっこいいと不覚にも思った。

かっちゃんよりイケメンじゃないけど、奥村も結構かっこいいんだ。



「にしても筧、凄いな」

「そうだよね、わたしも驚いちゃった」

「結構努力したんだなー」



希和の周りには多くの女子が集まり、希和を凄いと褒め称えている。

希和の成績があまり良くなかったことは有名だったから、いきなり3教科もクラストップで、やっぱり皆も驚いたらしい。



「…でも、変だな」

「え?」

「変だと思わねぇ?いきなりトップなんて」

「…希和頑張っていたから。努力が報われただけだよ」

「……」



疑うような目で、奥村は希和の後姿を見つめている。



「まさか……」

「え?」

「…いや、何でもねぇ」



奥村は立ち上がると、いつも一緒にお昼を食べている太田たちの元に行った。

奥村…一体希和の何を疑っているのだろう。

何か知っているのかな、わたしが知らない希和を。




< 24 / 131 >

この作品をシェア

pagetop