夏の日、僕は君の運命を変える






お昼休みが終わった4限目。

各教科ごとの学年トップファイブが、紙によって発表された。



国語の1位は、わたし。

2位の人と大差をつけてだったので、凄く嬉しかった。

放課後水樹くんと電話するとき、改めてお礼を言わないと。



数学の1位は奥村。

2位の人と5点差で、「ギリギリだったな!」と太田に言われていた。

国語の5位にもランクインしていて、「春沢のお蔭だ」とお礼を言われた。



そして希和。

歴史が2位、科学が4位と来て、英語は1位だった。

飛び跳ねてまで喜んでいたので、「おめでとう!」と言ったら抱きしめられた。

少し苦しかったけど、喜んでいるみたいで良かった。




『おめでとう心ちゃん。やっぱり心ちゃんは凄いね』

「水樹くんのお蔭だよ。
説明とか凄くわかりやすかったから、すんなり覚えられたし。
本当、ありがとう」

『確かに教えたのもあったかもしれないけど、実際は心ちゃんの努力の賜物だよ。
僕へお礼を言う前に、自分自身を褒めてあげて』

「自分自身を…?」

『そう。
自分、頑張った!おめでとう!ってね』

「…自分を褒めたことなんてないよ…」

『じゃあ良い機会だから褒めなくちゃ。
さ、僕が聞いていてあげるから、思い切り褒めてあげて。
今だけ自分大好き人間になっちゃって!』

「…春沢心、頑張った。おめでとう。お前は最高だ。天才だ」

『……ぷっ』

「吹き出すな!すっごくこっちは恥ずかしいんだからね!」



ゴロゴロと自室のベッドで制服姿のまま転がる。

水樹くんが聞いてくれているから、初めて自分を褒めてみたけど、やっぱり恥ずかしくてしょうがない。



『ごめんごめん。
頑張った、おめでとうまでは良いんだけど、最高だとか天才まで言うと思わなくて』

「……悪かったね自分大好き人間で」

『でも嬉しいでしょ?』

「……うん。何か、すっきりする」

『これからは苦労した分だけ、自分を褒めてあげて。
繰り返して行けば、きっとモチベーションに繋がるよ』

「ありがとう、水樹くん」

『心ちゃんは、確かに最高で天才だよ。僕が保証する』

「……ふふっ」



これからも、頑張ってみようかな。



『そういえば、心ちゃんに何か頑張ったご褒美をあげたいな』

「え?」

『ねぇ、来週の土曜日って暇?』

「うん…特に予定はないけど」

『じゃあ、僕と一緒にお出掛けでもしない?』

「え?」

『そこで僕が何か、心ちゃんが欲しいもの買ってあげる』

「どうやって。会ってもいないのに」

『僕らは今後、どんな形かはわからないけど巡り合うんだ。
その時に僕がお金を渡すから、今は心ちゃんが買う。
どうかな』

「……良いの?」

『うん。
絶対に会った時にお金は返すから。
日曜日は僕バイトが入っているから駄目なんだけど、土曜日なら』

「わかった。じゃ、お言葉に甘えちゃう。
土曜日ね」

『じゃ詳しくは前日の22日金曜日に電話するからその時決めよう。
ごめん、バイトの時間だから切るね』

「うん!土曜日楽しみにしているね」



通話を終えると同時に真っ暗になる画面。

わたしは立ち上がり机の上にある自分のスマートフォンの隣に置き、ベッドに寝転がる。



実際に会えない、電話だけのお出掛け。

良いことがあると良いな!




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