夏の日、僕は君の運命を変える






『…心、ちゃん?』



水樹くんの声がようやく聞こえる。

だけど、その声さえも今は聞きたくない。



「ごめん、水樹くん。
わたし、今…誰とも関わりたくない」

『心ちゃ…』

「今日は誘ってくれてありがとう。じゃあね」

『待って。最後に言わせてほしい』



耳から離そうとしたわたしは、スマートフォンと耳の間の小さな隙間を埋めた。



『僕は、何があっても心ちゃ…違う。
僕は…ここちゃんの味方だからね』

「……水樹くん」

『ここちゃん。
ここちゃんはひとりじゃない、僕がいるよ。
…それだけは、忘れないでほしい』



プツン、と切れる。

わたしは機械のようにスマートフォンを仕舞い、家へ向かって歩き出した。



「……っ!」



哀しさと、優しさが、心に痛い。

ショッピングモールを出たわたしは、無我夢中で走り出した。

もう、何も何も考えたくない。




< 38 / 131 >

この作品をシェア

pagetop