夏の日、僕は君の運命を変える
『…心、ちゃん?』
水樹くんの声がようやく聞こえる。
だけど、その声さえも今は聞きたくない。
「ごめん、水樹くん。
わたし、今…誰とも関わりたくない」
『心ちゃ…』
「今日は誘ってくれてありがとう。じゃあね」
『待って。最後に言わせてほしい』
耳から離そうとしたわたしは、スマートフォンと耳の間の小さな隙間を埋めた。
『僕は、何があっても心ちゃ…違う。
僕は…ここちゃんの味方だからね』
「……水樹くん」
『ここちゃん。
ここちゃんはひとりじゃない、僕がいるよ。
…それだけは、忘れないでほしい』
プツン、と切れる。
わたしは機械のようにスマートフォンを仕舞い、家へ向かって歩き出した。
「……っ!」
哀しさと、優しさが、心に痛い。
ショッピングモールを出たわたしは、無我夢中で走り出した。
もう、何も何も考えたくない。