FEEL《中》
『うわ、やっぱうま。』



口の中に広がる好きな味のおかげで先程の怒りは消えていた。
俺はその場で飲み干すと隣のゴミ箱へと投げ入れた。

いつからの分が入っているのか、山積みされた空き缶の山の上に崩さないように投げるのは容易いものではない。今回も崩れずに空き缶を投げるとその場を後にしようとした。



「あの…、」



足音が聞こえていたし、歩き方からして聞きなれなかったから予想はついていた。

だから彼女が目の前に現れても別に驚きはしない。



『どうしたの?』



いつもより優しく声をかけた…つもりだ。



「それ、どんな味ですか?匂いが…、」


『え、これ?これはココナッツミルクオレだけど?』



すると彼女は口元に笑みを浮かべた。



「匂いが美味しそうだなって思ったんです。教えてくださってありがとうございます。」



普通の男だと一目惚れするだろう笑顔を彼女は見せると、俺の横を通り過ぎて本体がボコボコの自動販売機へ向かう。


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