不機嫌なキスしか知らない




圭太はずっと運動部で、サッカー部のエースなんだから、本当に強いはずなのに。


それなのに紘もちゃんとそのスピードについて行けている。


苦しそうな顔をして走る紘に、初めて本気の表情を見た気がした。




思わず胸が弾んで、風になびく紘のふわふわの黒髪から、頭に巻かれた私の青いハチマキから、目が離せなくなる。






……私のハチマキして、走ってるんだ。



圭太に勝とうとして、走ってるんだ。




それがどんな意味を持っているのか、それは本人にしかわからないことだけれど。


このままだと私、勝手に都合のいい想像をして、期待してしまいそうだ。



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