不機嫌なキスしか知らない
「ねえ、紗和と藍沢くんって付き合ってるの?」
昼休みが終わって、校庭の、クラスの応援場所で椅子に座っていた時。
隣の席にいた女の子たちに囲まれてそう聞かれ、う、と言葉に詰まる。
クラスの席なので当然近くには紘もいて、突然聞こえた自分の名前に紘がこちらを振り向いた。
「だってさっきもいろんな女の子が藍沢くんのこと囲んでたのに、紗和のタオルだけもらったもんねー!」
「私も見てた〜!」
「だから付き合ってるのかなーって話してたんだよね」
大人数の女の子の視線に囲まれて、慌てて首を横に振る。