不機嫌なキスしか知らない
びっくりするくらい自分勝手で、私のこと振り回してばかりで。
なのにどうして、嫌いになれないんだろう。
どうしてドキドキしてるんだろう。
私が好きなのは圭太なのに。
好きじゃない人にされるキスなんて、最悪なはずなのに。
拒めないのは、きっと、あの日の紘の涙を本物だと信じてしまうからだ。
「そっちこそ、麗奈先輩のどこが好きなの」
「……言わねーよ、そんなの」
「私には言わせたくせに」
むっとして紘を睨んだら、もっと怖い顔で睨み返されて、思わず目を逸らす。悔しい。綺麗な顔の人が怒ると怖い。
「そんなん聞きたい?」
「紘は言わせたくせに!」
「はは、確かに。聞かなきゃよかった」
少し笑った紘は、少し黙ってから口を開いた。
「なんだろ、捕まえられないとことか」