不機嫌なキスしか知らない



「……紘とはそういうのじゃ、ないから」




紘はたしかに本気じゃない。
遊びか本気かって言ったら、絶対に遊びだ。


だけど私だって本気じゃないから、いいんだよ。




「なあ、ちゃんと聞けよ」




テレビ画面に映る「コンティニュー」ボタンを押して次のバトルを始めようとした私に、珍しく怒った声を出す圭太。


私のコントローラーを取り上げて、私の目を見る。

その真っ直ぐな視線を私は見つめ返せなくて、何だか後ろめたくて、ゆるゆると視線を外す。




「心配なんだよ。
俺、紗和が傷つけられるなんて嫌だよ」




……ずるいよ、圭太。


自分が幸せにしてくれる気もないくせに、そんなこと言わないでよ。

圭太が一緒にいてくれたら、私は幸せなんだよ。そう言ったら、幸せにしてくれるの?


そう思いつつも、そうやって真剣に心配してくれる圭太のことがどうしようもなく好きだと思ってしまう。



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