世界はきみに恋をしている。
そろそろ足が痛くなってきた。さっきからずっとこの階を歩き回っているんだもん。ローファーがもう歩きたくない、って言ってるみたい。
「おーい、ミウ?」
大分前を歩いていたノガミくんが、やっと私の存在を気にして立ち止まったみたい。人が多くてよく見えないけれど。
「もー……。ノガミくん歩くの早いし、どれだけ歩くのー…….」
「ゴメンゴメン、だって買い物ってたのしーじゃん」
ノガミくんはそう言って私の方へ戻ってきた。顔はとっても楽しそう。足取りも軽い。私はこんなに疲れたっていうのに。
「もー、今日は文化祭の買い出しでしょー…」
「そんな堅いこと言ってんなって。
せっかくなんだからさー。」
そう。今日、私とノガミくんは、近くのショッピングモールに文化祭の買い出しをしに来ている。
カナは「面倒くさい」の一点張りで、一緒に行ってくれそうもなかったから、しょうがなくノガミくんとやったきたってわけだ。
なのに、ノガミくんったらはしゃいで、さっきから関係ないものばっかり見ている。外見からもわかるけど、ノガミくんは雑貨や服なんかが大好きみたい。
いつも着ている派手な色のTシャツや、もうすぐ使うであろうマフラーなんかを見ていた。もちろん、見ているものは全部ノガミくんみたいな色のものばかり。
目をキラキラさせて、子供みたいにはしゃぐノガミくん。
でも、素敵だな。あんな風に、自分の好きなものを堂々と好きだと言えること。ノガミくんが手に取るものはいつも、私もそれいいかも、って思うものばかりだ。
……私は絶対、そんなに派手な色の物、身につけたりなんてしないけど。
本当は、そういう原色が好きなんだよ、って。知っているのは、きっと私とあの人だけだ。