無理な影武者
これは・・・。
俺は目を丸くした。
そこにはもうアクセス期限切れのはずの
俺の栄光の過去の記事があった。
「第12回、この本さえ読めば世界が変わっちゃう!大賞に選ればれた
新人小説作家の栗山裕樹。
誰もが予想しないド肝を抜かれる展開と個性の強いキャラクターで読者を惑わす
超大作・・・ねぇ」
「おっさん!ちょっとこの記事、どこで手に入れたんだよ!?」
「これか?だってネットで検索したらでてきた」
「うそつけよ!
この記事、俺が二十歳のとき、
そう、もう五年前もの記事だよ!
ネットでこんなしょうもない五年前の記事、とっくにアクセス切れなんだよ!
それに・・・」
「それに?」
「ここの出版社は、週刊誌の記事について、大物政治家から訴えられて、多額の慰謝料を請求されて、しかも100年に一度の大不況に見舞われて
倒産したんだ・・・。」
そう。
俺の唯一の居場所だったのに・・。
「まぁ、もともと小さい出版社だった。
あんな大賞も正直聞いたことないし・・・。
なにかでっかいことやろうとして、政治家に訴えられておじゃんってところか。」
「ふうん・・・。聞いてもいないのにいろいろと教えてくれるんだね。」
「なんだよその態度!だから俺の聞きたいことはぁ」
「アクセス切れの記事をなんで私が持ってるかってことだろ?」
「いや・・・そうだけど・・・。」
あれ。もっと根本的なこと聞かなきゃいけん気がする・・・。
「あのなぁ、私は
お前とは違って、頭の良い大学を出た医者だ。」
「だから何だよ!」
「これぐらいの個人情報くらい、ちょちょいのちょいってことだ。」


