妖狐の花嫁






「なっ……人間を嫁にするだと…!?」

「我らの血統に人間の汚らわしい血を混合させる気か!?」







鴉や白妖狐の家来達が
そう声を荒げて立ち上がり、こちらへ視線を向ける。



そんな騒ぎの中を、「騒ぐんじゃねェ!!」と仁が大声をあげて奴らを静めた。








「…吟、お前には何人もの花嫁候補の同血族がいるだろう。それはどうした。」

「花嫁候補……?
はっ…あんなの眼中にもないねぇ。」

「……代々、そうしてきたのがお前ら狐達のしきたりだろう。白妖狐の一族もそれに従ってきてる。」







それを破るつもりなのか、と

仁が静かに俺へ尋ねてくる。





その言葉を聞いて
俺は1度目を伏せてから

薄く開いた横目で、静かに仁を見た。







「…仁は、あの子が人間のまま
この世界で生きていけると思う?」

「……いや、難しいだろうな。
ここの妖力に何の影響もなく過ごせるとは思えん。」

「そうだよねぇ、俺もそう思ってる。」








俺がそう言うと

仁は「何が言いたい?」と
綺麗に答えない俺の態度に眉間を寄せる。



しかしそこで

同種族である白妖狐の神 真(しん)が
勘良く、顔を上げた。








「っ…まさか吟、お前その子に
『術』をかけたのか…?!」

「───『術』?」







真の言葉に、仁が顔を向ける。



俺が静かに笑うと

真は目を見開いて それから顔を伏せた。





仁は俺たちに説明を求めて
鋭い睨みを向けてくる。






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