涙の流し方
学校の授業が終わり、帰宅した。


「ただいま」



広くて空虚な家に自分の声が木霊する。

いつもこの家は僕を拒んで居るんじゃないかってくらい、静か過ぎる。



リビングに行くと、誰もいない。


ランドセルをソファの上に下ろして、
手洗いうがいをし、家族共有のタブレットを開き、今日の予定リストを見る。


いつも、それが日課になっている。



父の邦洋(クニヒロ)は、弁護士をしている。
今は、一段落したみたいで夕方には帰ってくる。


母の朱里(アカリ)は、
芸能プロダクションの社長。
いつも、多忙なのに仕事してる時は凄く楽しそうだと聞いている。


兄の宏哉(ヒロヤ)は、小児科医。
彼女と同棲しているから、一緒に住んでは居ないけど、たまに遊びに来てくれる。


姉の有紗(アリサ)は、歌手。
母の事務所に所属して、歌手活動をしている。


妹の美弥(ミミ)は、子役。
母の事務所に所属して、二年前の七歳の時から活動をしている。


弟の侑海(ユウ)は、モデル。
侑海も美弥と同じく二年前の五歳の時から活動をしている。




だから、予定はびっしり埋まっている。


けど、そこには、僕の知衛(トモエ)と言う所はない。


いつも、学校から家しか往復しない。
外にも出掛けるときが無いから、必要ないと判断されて、僕の予定リストはない。



だいたい一人で居ることが多いけど、寂しくはない。



ランドセルを自分の部屋に置いて、
ベットの上で横になる。


そこには、
熊のぬいぐるみの空(ソラ)くんがいる。

全長60cm の空くんを抱き締めていると落ち着くし、寂しくない。


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