恋してバックスクリーン

昨日の夜はふたり、指を絡ませて眠った。朝、先に家を出る私に、玄関先で口づけをくれた。

寿彦さんは、言葉では言わないけれど、いつも態度で示してくれる。寿彦さんは私のことを好き……なはずだ。

朝から気分がいい。仕事もはかどる。寿彦さんの言動ひとつひとつで、私の毎日が良くなったり、悪くなったりする。

今日は、最高に良い一日を過ごせた。夕方、得意先での商談を済ませると、まだ少し早い時間だったけれど、そのまま直帰した。

書類を家に置いたら、スーパーへお買い物に。私が先に帰って、晩ごはんを作っておいたら、寿彦さんがよろこぶやろう。まぁ、表情には出さないけれど。

心を弾ませながら、階段を昇り、鍵を開けた……が、なぜか鍵が開かない。どうやら、寿彦さんが鍵を閉め忘れて出かけてしまったようだ。

「もう、寿彦さん……」

小さくつぶやいて笑うと、もう一度、鍵を開けた。玄関に私のものではない、女性用の靴が脱いであった。





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