恋してバックスクリーン

加茂さんのおかげで、今日はなんだかドッと疲れた……。結局、サンマー麺はごちそうになったけれど。

それにしても加茂さん、どういうつもりであんなことを……。私をからかっているのだろうか。

『では、また』

お店の前で、そう言って帰った加茂さん。仕事ならともかく、プライベートで『また』は、考えてもいない。

まぁ、いいや。とりあえずそっとしておけば……。

「ただいま」

こんな日は、寿彦さんに甘えよう。疲れをごまかすように、少し大きめな声で言った。すぐに反応がないのは、いつものことで気にしない。

寿彦さんは、ソファにもたれかかるように座ったまま、黙って私を見ていた。

「ただいま」

もう一度、声をかけて、無表情な寿彦さんに笑顔を向けると、小さく「おかえり」が返ってきた。荷物を置いて、ソファに座る寿彦さんに抱きつく。

すると、ふぅ……とひとつ、ため息の返事。え? 私、汗くさい? すぐに寿彦さんから離れて確認した。

「メシにしよう」

ソファから立ち上がると、寿彦さんはぶっきらぼうにそうつぶやいた。


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