恋してバックスクリーン

楽しい会話とおいしい食事で満たされた帰り道。

「莉乃ちゃん」

「はいっ!」

珍しく、寿彦さんが私の名前を呼ぶもんやから、ドキッとして返事の声がうわずった。

「うちに住めば?」

お互いにひとり暮らしだから、一緒に住めば、行き来する手間が省ける。でも、あまりにも突然の提案に、返す言葉がみつからない。

「帰る必要、ある?」

帰り道は、暗くて表情まではよく見えないけれど、いつの間にか繋がれていた手から、寿彦さんの愛を感じた。

「ない」

「決まった」

ぎゅっと強く手を握られると、心までわしづかみにされる。言葉足らずだからわかりにくい。でも確実に私、寿彦さんの愛に溺れている。




< 5 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop