恋してバックスクリーン

「ふたりでゆっくり、話し合いな?」

海津さんの気遣いで、家まで送り届けてもらった。加茂さんのおかげでややこしい話になった。その前に、ふたりはなんの話もできていない。

「ありがとうございました」

お礼を言って車から降りると、寿彦さんの後に続いてコーポの階段を昇った。

部屋の鍵を開けようとした瞬間、部屋のドアが開いた。

「わっ! びっくりした……」

ドアを開いたのは、寿彦さんの浮気相手だった。この女性のこと、忘れていた。加茂さんのことで頭がいっぱいだったから。

「聖子……また勝手にあがりこんで」

迷惑そうな顔をして、寿彦さんが言った。でも、全く動揺していない。浮気相手の女性と鉢合わせているのに……。

「ごめん、ごめん。今日、彼を連れて実家に帰ったら、いろいろ持たされて。寿彦、たまには帰ってこい! って言っていたよ?」

え? 彼と、実家……? この女性、浮気相手じゃなくて、もしかして……。

「彼女、連れて帰るわ」

え? 寿彦さん!? ただでさえ混乱している頭の中が、さらにごちゃ混ぜになった。

「かわいい彼女だから、お父さんがよろこびそうだね」

聖子さんはそう言うと、小さく手を振り、帰っていった。

「寿彦さん、さっきの……」

部屋に入りながら、おそるおそる尋ねた。

「双子の妹」

「に、似てない……」

浮気相手だと思っていた女性が、まさかの妹。

「く、詳しく聞かせてもらっても、いい?」

ごちゃ混ぜの頭の中、一度、整理をしなければならない。

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