私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


***


「次は自習だってよー」

「マジで、ラッキーじゃん!」


新しい席になって早々、一限目が自習になる。
私は、新しい席になんとなく慣れず、尚くんを振り返った。


「椿ちゃん、席残念だって思ってる?」

「え……あ、ううん、むしろこれで良かったのかも……」


どんな顔して、一護を見ればいいのか分からない。
だって、あんなに傷つけて、私の嘘に振り回した。


視線を窓際に向けると、紗枝と一護が楽しそうに話しているのが見える。


私の大切な人たちが、笑顔でいる。
ただそれだけで……いいはずなんだ。


多くを望んだら、痛い目見るのは分かってる。



< 175 / 211 >

この作品をシェア

pagetop