私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



***


放課後、階段を上って、屋上へと向かう。

紗枝と、どんな顔して会おう。


「き、昨日はごめんね……って、なんか軽い」

なら、なんて言ったら真剣さが、伝わるんだろう。


「傷つけてごめんなさい……だと、暗すぎかな…」

私は、シュミレーションをたくさんして、屋上の扉の前にたどり着く。


そして、少しだけ開いた扉から、恐る恐る屋上をのぞくと…。


「え、どうして……」

そこには、待ち合わせた人とは違う相手がいた。

驚いて、立ち尽くしていると、後ろから階段を上がってくる足音が聞こえて振り向く。


「……椿、来て…くれたんだね」


数段下、私を見上げる紗枝が、そこにはいた。
私は、体ごと向きを変えて、紗枝を見つめる。


「紗枝、どうして……」

「椿、私の質問に、答えて欲しい」


紗枝が私から聞きたい質問の答え。

それは、すでにされた質問で、嘘で誤魔化してしまった返事だった。


< 197 / 211 >

この作品をシェア

pagetop