恋のクスリ。
*1*

出会い






「ただいま」





そう言いで迎えるのは、『母』と呼ばれる存在ではなく、





「おかえりなさいませ、蓮さま」





『家政婦』と呼ばれる存在であった。





「ただいま、岡本さん。今日もいい匂いしますね」



脱いだ制服のジャケットを家政婦に渡し、俺はキッチンに足を向けた。





「今日は、隼斗さまの金賞祝いですから」




豪華な料理が、次つぎにテーブルに並んでいく。





「あら、おかえり蓮くん」



「ただいま、お母さん」





テーブルの上の料理を目にし、「今日は豪華だこと」と真顔でつぶやく母の爪は毎日違う装飾品がついている。



「今日のネイルどう?かわいいでしょ」





嬉しそうに息子に自分の爪を見せる姿に俺は笑ってしまいそうになる。




生まれてこのかた ‘料理’ などしたことがない母の手は


苦労が感じられない人間味のない手であった。






「かわいいね」
















—— 醜いね。











そう言ってやりたかった。
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