セロリとアライグマ
この間席替えがあった。

オレは気に入っていた窓際から離れ、廊下側の一番後ろになった。

ここはもう少し経てば究極に嫌な席。なんといっても寒い。

いくらズボンをはいているとはいえ、足元を抜ける風は冷たいので早く席替えをして、冬になる前に暖房の近くに行きたい。


隣だった新伊は、真ん中の列の後ろから2番目でオレとは結構離れた。


兼古の斜め後ろになったため嫌がらせされやすくなったのか、席の近くにゴミを投げられたりする頻度が高くなったような気がする。


まるでストレス解消でもしているかのように。


新伊は無言でそれを片付け、そして無言で教室を出て行く。

おそらく手を洗っている。


数日前に、新伊のカバンの中にオレがあげたハンドクリームが入っているのを見かけた。
それが役立っているといいんだけど。


でもハンドクリームの効力がなくなるくらい新伊は手を洗う。



バイト先のコンビニで会ったときは普通だった新伊。

手を洗う学校では嫌がらせを受けているアライグマ。



あと半月で前期の委員の任期が終わるので、「美化委員」という新伊との接点も無くなる。

別に新伊がどうなろうとオレには関係ないけれど、オレは新伊に、姉の実羽に聞いた『強迫性障害』のことを伝えたかった。

オレが新伊の心配をしたところで女子のシカトや嫌がらせは収まらないとは思うが、とりあえず潔癖症ではなくて「強迫性障害」という病気があるということを伝えたかった。


自分はおかしいんだろうかと不安そうに言っていた新伊。

その不安をなんとか言葉にして伝えたかった。

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