ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
『そのメガネ、似合うな』


あの言葉は、友人のワガママを聞いた私へのご褒美みたいなものが含まれていたんだろうか。

大事な彼女の友人を気遣い、思わず出てきたお世辞?それとも、何か他に意味があって……



(……あるわけがない)


そんなのあったら困る。絶対にないと信じたい。
副社長は大学時代の彼とは違う。誰かに言い寄られたからと言って、擦り寄ったりはしない。



『相手は単純に人間なんだ。彼氏だろうが何だろうが、フツーに浮気くらいする時はするさ』


鋭い視線の男が言った言葉に胸の内が揺れる。
そんなことを微塵でも望んではいけないのにーーー。



(でも……)



『ホントに好きなら伝えるくらいしてもいいじゃん』


無責任な男が言った言葉。
それに惑わされて何になる。


『大輔を好きなら好きでいいじゃん。認めてみろよ。その方がきっとラクになれるぞ』


自分はケイへの思いを隠しもしないで見せた。
彼女のことをからかったのも、好意からくる嫌がらせみたいなものなんだろうか。

副社長はそんな男からケイを庇っていた。
さり気なかったけど、もしかして…と疑ってる部分はあったのだろうと思う。




(ああ、それでか……)


急に合点がいった。
あの言葉は、羅門を頼むという意味だったんだ。

赤縁のメガネが似合うから頼んだ…と、そういう意味に違いない。


「はは…そういうこと……」


< 44 / 191 >

この作品をシェア

pagetop