ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「レッツ・トライ!」と背中を押された。
仕様がなくなり、渋々、社長の申し出に付き合うことにした。


誘われたのは金曜日の夜。てっきりホテルのレストランで食事かと思い込み、それなりの格好をしてオフィスへ来てみれば。



「そんなキレイ目な格好で来たのか」


呆れるような眼差しを向けられた。それもそのはず、連れて行かれたのは庶民的な定食屋さんだったから。



「社長に就く前は、よくここで食事したんだよ」


懐かしそうに店内を見回して料理を注文する姿にギャップを感じた。


「私、社長はこういう店ではお食事をされないのかと思ってました」


正直なところを言うと、格式張ったレストランで食事をするのが嫌だった。
社長は私の話を聞いて、見たこともないくらい面白そうに笑った。


「僕だって最初から社長だった訳じゃないよ」

「そりゃそうですけど」

「それにうちの会社は成り上がりみたいなもんだから、子供の頃は案外と質素な生活をしてたんだ」


「えっ、そうなんですか?」

「そっ。だから、君も気を張らなくていい」


ざっくばらんな一面には好感が持てた。
でも、仕事の話となると別人だった。


「企業を司る人間なら勤める者の度量を知っておかないとマズい」


適材適所に人材を配置し育成する。
社長に就任してからは、こまめに人を入れ替えて成長させてきた…と語った。



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