五月雨物語
あれから半年あまり・・・

季節は過ぎ

塁のいないクリスマスを迎え

塁のいない年を越え・・


そして春を迎えた。

最後に塁がくれた言葉と
愛だけを抱えて
あたしは生きている。

あたしの胸には
まだ鍵がついたまま・・・

あれから、恋はしていない。

塁がいなくなってから

あたしは引越し
あの土地を離れた。

夜の仕事も辞めて
今は、知り合いの会社に
お世話になっている。

塁を思い出させるものは
何もかも辛い。


短か過ぎた季節の残骸は
幾度雨が降ったって

流れてゆかない。

特にこんな雨の日は
鮮明な色を持って甦る。

まるでいつか見た
あの夢のように・・・
< 174 / 240 >

この作品をシェア

pagetop