テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

『100メートル先、右に曲がります』



地図の女の人の声はあふれ返る人の声にもみ消され、ほんのかすかにしか聞こえない。

私は澪君の家に行く道すがら、ケーキ屋さんに寄って澪君の好きなイチゴのムースタルトを小さなホールで買った。

これも雑誌情報である。

去年のバレンタイン企画で、好きなお菓子についてメンバーが話し合うコーナーがあった。

『俺、あれ好き!イチゴのムースタルト。タルトのサクサク感とイチゴムースの甘酸っぱい感じがたまらなく好きなの。その上にフルーツ乗ってたら本当に最高』

このコメントに、『澪ちゃんはいつもそればっか食ってるよな』と蒼悟君が続けていた。


先日のお礼も兼ねて、何かを買っていくことはずっと考えていた。
でも、なかなか決まらなくて、そんな時にこれを思い出したのだ。


あともう一つ、あのコーナーで話題になっていたこと。


『俺、普通のお菓子も好きやで!ポテチとか、チョコとか!交互に食べる時とか、ほんま至福の時間やわ(春翔)』


『それ俺も!オフの日とかはいつもそれ。棚にストックしてあんの。俺はたくさん食べても太らない体質だから体重も気にしなくていいし、いくらでも食べちゃう(澪)』


この記事も、私はしっかりと覚えていた。

片手にイチゴムースタルトの白い箱を提げて、私はコンビニにも寄り道した。

ちょっと奮発すると、カゴはあっという間にいっぱいになる。

まぁ、この前の宿泊費の代わりというのもなんだけど、そんな感じだしね。
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