テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「なにが?」


え?

私の後ろには不思議そうにこちらを見つめるなーちゃんがいた。
お風呂上がりなのか、タオルで髪の毛を拭きながら立っている。
お気に入りの丸眼鏡の向こうのなーちゃんはすっぴんで、文化祭で会ったときとはまるで別人のようだった。
すっぴんは見慣れているけれど、こうやってギャップを見せられると、いつもより顔が薄く見えてしまう。


「なに我慢してるの?お菓子?」


ベッドの上に座って私を見つめる。
今思えば、私はまだなーちゃんに、澪君と付き合っていることを話していない。
背中押してくれたのはなーちゃんなのに。


「澪君に会うことー」


私もなーちゃんの隣に座る。
タオルケットから毛布に変わった私の布団は、夏に比べて随分と大きくなった。


「ライブ?」


「違うよ」


私は小さく咳払いをする。
閉め忘れた窓から、体の芯から冷えるような風が入り込んできた。


「付き合ってるの、澪君と」


少しの沈黙と、止まった時間。
それからなーちゃんは顔をキラキラと輝かせながら私を抱きしめた。


「もーぉ!!よかったね!!よかったね!!
夢叶ったね!!」


苦しいほどに私を抱きしめながら、いつもの大きな声で私を祝ってくれる。
ちょっとうるさくて嫌になることもある。
でも、やっぱり大好き。


「いろいろ大変かもしれないけど、私応援するから」


私から離れてガッツポーズをしたなーちゃんは、なんだか誇らしげだ。
私は「ありがとう」と言って、もう一度、今度は私から抱きしめた。
なーちゃんは少し照れた顔をしていた。

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