テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「………東雲澪は」


澪君は大きく深呼吸をした。


「結婚を前提に、お付き合いをしている方がいます!」


突然のことに、再び会場がどっとざわつき始める。
私は頭がポーッとして、話についていけてない。


「とっても可愛い、一般人の子です。俺がなかなか人気がでなくて苦しんでいた時、支えて応援してくれた、大切な人です。
ここでは、これからもみんなの東雲澪でいるので、どうか、ご理解をよろしくお願いします!」


澪君が深々と頭を下げる。
それに合わせて、蒼君も、悠君も、春翔君も、みんな同じように頭を下げた。


耳をすますと、「ありえない」とか、「アイドル失格じゃん」とか、「なんで一般人なの」とか、たくさんの怒りや不満の声が聞こえた。

でもその一方で、「おめでとう!!!」と叫ぶ声が聞こえた。

まひるちゃんだった。

次第に「おめでとう!」の声の方が大きくなっていき、会場は、祝福の雰囲気にまとまっていった。


澪君…。


私とのこれからのこと、きちんと考えてくれていたんだ。
きっとこの先、苦しいこともたくさんあるに違いない。
悲しいことも、もちろん嬉しいことだって。
でも、澪君がいれば、大丈夫だ。
何があっても、二人なら乗り越えていける。
バレないように涙を堪えて、私は一人、「ありがとう!」と叫んだ。
届いたかな。届いて欲しいな。



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