スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「大丈夫ですか?」


声をかけると、瞼がうっすらと開き私を力ない瞳で見つめる。


「……高梨か。どうした?」

「それはこっちのセリフです。具合悪いんですか?」

「悪くない」

「立てます?」

「当たり前だ」


馬鹿にするなと言いたげに眉根を寄せた彼は、足腰にぐっと力を入れて体を起こし立ち上がった。

──が、しかし、廊下を歩く足取りはフラフラとおぼつかない。

それを見て私は悟る。

彼は、酔っているのだと。


「かなり飲んだんですか?」


どうにかリビングに辿り着いた彼の背中に問いかけると「忘れた」と面倒そうな声が返ってくる。

これ、私の予想は外れていたんだろうか。

本当はお酒にすごく弱い?

それとも、飲まずにいられないほど疲れていたか嫌な事があった、とか?

どちらにせよ、先ほどから座りもせずにお笑い番組を眺めている識嶋さんは間違いなくいつもの識嶋さんじゃない。


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