スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「そろそろちゃんと僕だけのものになりましょうよ。そして、みんなの前でハッキリさせるんだ。識嶋のボンクラ息子となんか付き合ってないって」


ねえ、高梨さん。

震えるあなたも魅力的ですね。


心底愛しそうに呟き、恍惚とした表情で私を見つめる彼の顔が、ゆっくりと私との距離を詰めていく。

抵抗したくても、彼と彼が手にしたままのナイフが怖くて。

せめてと顎を引き、肩をすくめたその時──


「こいつに触るな」


怒りに満ちた低い声が聞こえたと同時、内山君が背後から蹴り倒されナイフが地面を滑った。

そして、解放されたばかりの手首にまた強く掴まれて。

けれど、その手は私を乱暴にすることはなく。


「無事か、高梨」


私を庇うように広い背に隠した。

助けに、来てくれた。

識嶋さんが、来てくれた。

まだ恐怖は抜けておらず、心臓はパニックを起こして荒く打っているけれど、私はどうにか「はい」と声を発した。

すると、倒れていた内山君がぶつぶつと言いながら立ち上がって。


「ねえ、高梨さん。こんな乱暴な男より、僕の方があなたを幸せにできるよ」


すがるような、泣きそうな声で訴え始めた。



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