スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「服を着ようと思って」


裸ではないものの、下着だけでは心許ない。

ただそれだけだったけれど、識嶋さんは必要ないと言いたげに私を腕の中に引き寄せた。

再び私は彼の腕に閉じ込められ、体温を分け与えられる。


「朝になったら着ればいい」

「風邪ひいたら大変ですよ。識嶋さんも会社休んでる暇はないでしょう?」


咎めるというよりも、優しい声色で言い聞かせるようにすれば、彼は眠たそうにしながら「確かにそうだな」と零し、腕の力を緩めて私を解放した。

そして、離れて行く体温に寂しさを感じたと同時。

──キュルルルル……と、私のお腹が空腹を訴えた。

どうやらその音は識嶋さんの耳にもバッチリ届いていたようで。


「まあ、食べてなかったしな」


小さく笑いながら、夕食を口にしていなかったとフォローを入れてベッドから起き上がると、クローゼットからグレーのバスローブを取り出し羽織った。

次いで、白いバスローブを貸してくれて、私がそれに腕を通せば「何か食べるか」と言ってリビングへと向かう。

……何事もなかったように普通の会話をしているけど、数時間前には確かに、私たちは結ばれたのだ。

今に至るまでの事を思い出し、にやけてしまいそうになるのを防ぐように、私はベッドから出ると識嶋さんの後を追った──。


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