溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~

黙っているよりも正直に伝えてしまったほうが、瀬戸くんの心を悩ませないだろうか。

「……お昼休憩のときに急に声をかけられて。仕事で近くまで来たそうです」
 
黙り込む彼に、「でも」と続ける。

「すぐに追い返しました。話すことなんて何もないし。あの人とは、もう完全に終わってるから」

「本当に?」
 
ふいに引き寄せられる。腰に手を回され、正面から顔を覗き込まれた。虹彩の広い満月みたいな瞳が、私をとらえる。

「本当に」
 
はっきり口にしたとたん、こわばっていた彼の身体から力が抜けたようだった。
 
しばらく見つめ合ったあと、瀬戸くんが顔を近づけてくる。私はとっさに彼の唇を押さえた。

「ダメです」

「どうして」

「ここ、会社だから」
 
じっと私を見下ろしてから、彼は疲れたように肩を落とした。

「厳しいな、光希は」

「こういうのは、ちゃんとしないと」

「はいはい」
 
私を解放すると、瀬戸くんは弱ったように笑いながら私の頭を撫でた。


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