溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「男なんて、みんな嫉妬深いだろ」
空っぽのベッドが布団で横になっているふたりを見下ろしている。汗ばんだ手が伸びて、私の髪をさらりと撫でた。
「俺が余裕なく働いてるあいだに、光希がほかの男からちょっかいかけられないか気が気じゃないよ」
そこまで言って、彼は口ごもる。
「俺、だいぶ病んでんな。働きすぎかも」
胸まで掛け布団を引き上げて、私は上半身を起こした。となりに横たわる瀬戸くんをまっすぐ見下ろす。
「疲れたときは、いつでも言ってください」
大きな目がきょとんと瞬いた。
なんでもひとりでこなしてしまうが故に、人の何倍も仕事をして、誰かに甘えることも許さずひとりで抱え込んでしまう瀬戸くん。そんな不器用なあなたを、私は放っておけない。
「公私ともに、私が生吹さんを支えますから」
彼の頬に、そっとキスを落とした。
営業をサポートするアシスタントの仕事は、もしかしたら私にとって天職なのかもしれない。
子どもの頃は弟や妹の面倒を見るのが嫌でたまらなかったのに、今は誰かの支えになれることに、こんなにも喜びを感じている。
――俺の生きがいになってみせてよ
オフィス五階の屋上で瀬戸生吹が言った言葉は、たしかに私の運命をがらりと変えてしまった。
不器用に突き進む姿に、まっすぐぶつかってくる瞳に、いつのまにか胸を打たれていた。
彼がいるから、私も頑張ろうと思えた。
「好きです、生吹さん」
あなたは私の生きがいなんです――
大きな手が伸ばされ、私の両頬を包み込む。ゆっくり引き寄せられ、私たちはもう一度唇を合わせた。
オフィス五階の屋上で。
END

