君に溺れた
side~三石竜哉~
真凛さんはホテルの一室で親父を待っていた。

「真凛、大丈夫か?寒くないか?」

「えぇ、大丈夫よ。お父さんこそ、奥さまに話せた?竜哉くんにも・・・!?」

「真凛さん、大丈夫?」

「竜哉くん。」

「竜哉が話したいというので連れてきた。何度か会ってるそうだな。」

「えぇ、偶然知り合って。竜哉くん、お父さんのこと、黙っていてごめんね。いきなりあなたの義姉って言うのは躊躇いがあったから。傷つけたよね?」

「真凛さん、大丈夫だよ。真凛さんが、俺の姉って聞いて、少し納得したんだ。真凛さんと話してると気持ちが楽になって話しやすい。今まで女性とこんなに気楽に話せたことなかった。だから、母親は違うけど、俺たちは兄弟だね。結婚式、僕も出ていい?」

「出席してくれるの?」

「うん。母親も、俺が説得するから。式、楽しみにしてる。」

「ありがとう。竜哉くん。」

真凛さんと親父を残して俺は部屋を出た。

ホテルを出て、宛もなく歩いた。

すれ違う人がチラチラ俺を見ている。

店のショーウィンドウに映る自分を見て驚いた。

「ふっ・・・かっこ悪・・・」

頬を伝わる涙に気づかなかった。

自分の情けない姿をみて気づいた。

俺は、初めて恋をして、今日恋を失ったんだ。

恋をして、泣いたりする奴を今まで馬鹿にしてきたが、本当に恋をすると自然と泣けるんだな。

俺もみんなと同じなんだな。

涙を拭う。

胸の痛みを振り払うように前を向いて歩き出す。



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