LOVE物語2
ーside千尋ー

私は遥香を連れて部屋へ向かった。

涙の後が部屋の明かりに反射して見えたから。

それを見たら、見逃す訳にもいかない。

「遥香、何かあった?」

「え?」

「泣いたでしょ?」

「…よく分かったね。」

「昔からの付き合いだから。」

「そうだよね。」

「で、どうした?」

「私、尊に話を聞いたの。これからも一緒にいてもいいのって。」

「うん。」

「そしたら、当たり前って言われたの。その当たり前が私はすごく嬉しくて。私にとっては当たり前じゃなくて奇跡に思えて。」

「嬉しかったんだ。」

「うん。」

「よかった。遥香のことを任せられる人がいるなら私も安心できるよ。それでも、私も大翔もこれからも一緒にいるつもりだから。逃げられないからね?遥香。」

「千尋!」

遥香が私に抱きついてきた。

「遥香。」

昔から、色んなことがあって、ずっと誰にも頼らず生きてきた遥香を、変えてくれた尊さんなら安心して任せられる。

遥香にももっと幸せになってもらいたい。

「遥香、尊さんのことちゃんと頼るんだよ?」

「頼り方が分からないんだよね。いつも自然に尊がそばにいて助けられてるから。気づくとそばにいてくれるっていう感じなの。」

「とりあえず、体調が悪いことを我慢しないっていうところから初めてみるのは?」

遥香にとって、これが1番ハードルが高いことは分かってる。

体調が悪いことを時々我慢している時もある。

正直、遥香が苦しんだりしている所を見るのは辛い。
だけど、本人が1番辛いはずだよね。

だから、遥香にはハードルは高いけどそこから初めてほしかった。

遥香のためにも。

「千尋、それはハードル高いかも。」

やっぱり、そう言うと思った。

「遥香にはちょうどいいくらいだよ。」

「頑張ります。」

「えらいぞ遥香。」

このくらい、ハードルをあげておかないと何かあってからだと遅い。

対応できるのは私達じゃない。

きっと、尊さんしかいない。

親友としても、遥香のそばで支えよう。

私も、遥香に支えられてきたから。

「遥香。尊さん心配するから戻ろうか。」

「うん…」

「ん?どうしたの!?」

私の腕に肩にもたれかかる遥香。
脱力している。

「眠い?」

「うん。」

「もうそろそろ日付変わるからね。寝よっか。」

「うん。千尋は?いいの?お兄さんと話しなくて。」

「まだ1ヶ月は家にいるから大丈夫。私、尊さんと大翔に伝えてくるね。」

「うん、ありがとう。」

私は下に降りて尊さんに伝えた。

「尊さん、遥香眠くなったみたいなので私と遥香は先に寝ますね。」

「あ、分かった。千尋ちゃん、ちょっと来て。」

尊さんに手招きされてそばに行った。

「遥香が、咳とかしたら吸入させてほしいんだ。千尋ちゃんやったことあるよね?」

「はい。できますよ。」

「夜中に発作を起こすことがあるからお願いしてもいい?」

「分かりました。」

「あ、それから吸入してもおさまらなかったら起こしに来て。」

「はい。」

「千尋、俺はどこで寝ていいの?」

「あー、朝陽!大翔のこともよろしくね。」

「了解。」

私は遥香の吸入器を持って部屋へ戻った。

部屋に戻ると布団でぐっすり眠る遥香がいた。

よかった。
ぐっすり眠れてるみたいで。

女子でも惚れるくらい可愛い寝顔してるんだから。

尊さんも理性抑えるのに大変なんだろうな。

この子が隣で寝てるんだから。

吸入器をテーブルの上に置いて、遥香の隣にひいた布団に入った。

「おやすみ、遥香。」

きっと聞こえてないとは思うけど。
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