LOVE物語2
8.心と身体のリハビリ
ーside遥香ー

「はる…遥香!」

尊に、身体を揺すられて起きた。

「尊?」

「そうだよ。やっと起きたか。」

私はテーブルに置いてあった携帯の画面を開いた。

8時か…

「6時半に起こしたんだけど、全然起きないから焦ったよ。」

全然気づかなかった。

相当深い眠りについてたんだろうな。

「遥香、朝ご飯食べられそう?」

お腹は空いてないけど、少しなら食べれそうかも。

「少しなら…。」

「分かった。」

尊は、ナースコールを押して看護師に

「白石遥香の朝食持ってきてもらってもいい?それと、薬と水もお願い。」

「分かりました。」

それからしばらくして、朝食が運ばれてきた。

「尊も、同じやつ食べるの?」

「うん。遥香の食事は何も制限されてないからな。普通の食卓となにも変わらないよ。ただ、海老と卵は入ってないけどな。」

「そうなんだ。」

通りで、朝からしっかりしているわけだ。

お粥じゃなくて普通のご飯になってる。

私は箸を持ち、とりあえず味噌汁に手をつけた。

「美味しいか?」

「うん。」

正直、少しだけしょっぱい。

「おい、無理して美味しいって言わなくていいよ。味噌汁しょっぱいだろ?」

むせそうになった私を見た尊は、そう言葉にして、背中をさすってくれた。

「無理して食べなくていいから。ゆっくり時間をかけて食べられるようになっていこう。」

「でも、卒業式までにはちゃんと良くなりたい。」

「そうだな。でも、焦らないでいいんだ。」

「うん。」

「ほかのおかずは食べられそう?」

「うん。」

結局、私は半分も食べられることができずに残してしまった。

でも、尊はそれを攻めなかった。

むしろ、昨日より食べられたことを褒めてくれた。

「俺は外来に戻るけど、何かあったら必ずナースコールを押すんだよ?」

「分かった。」

気づけば時間は9時になっていた。

「10時にリハビリだから、昨日の神代先生が来てくれるよ。」

「神代先生怖い?」

「んー、どうだろうね?」

尊は、にやっと笑った。

「大丈夫。遥香のことちゃんと伝えてあるから。」

「分かった。」

「頑張ってね。」

「うん!尊も、頑張って。」

「ありがとうな」

そう言われ、おでこに口づけされた。
恥ずかしくてしばらく放心状態だった。


コンコン

「はい。」

「おはよう!遥香ちゃん!」

元気よく入ってきた神代先生。

「おはようございます。」

「気分はどう?」

「大丈夫です。」

「喘息は起きたかな?」

「昨日から起きてません。」

「うん、なら良かった。じゃあ、リハビリに行こうか。」

「はい。」

私は、神代先生に抱き上げられ車椅子に乗せられた。

身体が浮かんだ衝撃で傷が痛んだ。

「ごめん、痛かったね。」

険しい表情をした私に気づいた神代先生。

抱き上げた時に、険しい表情をしたのは神代先生も同じだったよね?

「神代先生?」

「ん?」

「さっき、先生も険しい顔してましたよね?」

「…遥香ちゃん、最後に体重測ったのっていつ?」

「んー…確か入院の時です。」

「そっか。ちょっと、体重が軽すぎて驚いた。でも、だからって気にしなくていいから。きっと、遥香ちゃんも退院できるように、ご飯の方も頑張ってるんだもんね?」

「はい。」

「よし、行こうか。」

神代先生に車椅子を押されてリハビリテーション室へ連れていかれた。

そこには、お年寄りや30~40代の大人達がたくさんいた。

私と同じくらいの歳の人は1人もいない。

だから、不安になった。

「遥香ちゃん?大丈夫?具合悪い?」

気付けば俯いてしまった。

私は、首を横に振った。

「無理はダメだよ。何か、不安なことある?」

「…ないです。」

「本当?」

「はい…。」

「じゃあ、とりあえず俺の首に自分の両手を回して俺に捕まってもらえる?」

私は、神代先生の言う通りにした。

「そうそう、上手だよ。そしたら、立ってみよう。」

え?立つの?
1週間ぶりに立から足がふらついた。

「うん、大丈夫。最初だから焦らないで。」

そうは言われても、みんな普通に歩いてるよ?

「じゃあ、そこの両方の手すりを使ってゆっくり歩いてみよう。」

「この手、離すんですか?」

「うん。」

「…怖い…。」

「大丈夫、倒れそうになったら必ず支えるから。遥香ちゃん、勇気を出して手すりに掴まってみよう?」

私は、神代先生の言葉を信じて手を離し手すりへ手を移動させた。

「そうそう!いいね、順調だよ。」

1つ1つのことが出来ると褒めてくれる所は、何となく尊に似ていて安心してリハビリができる。

「よし、30分経ったから少し休憩しようか。」

神代先生にそう言われ、近くに置いてあった椅子に座った。

「どう?リハビリは。」

「思ってたより大変でした。」

「そうだね。最初は、上手くいかないとは思うけど、1人1人の気持ち次第で歩けたり患者自身で建てた目標を達成することができる。遥香ちゃんも、ふらつかないで歩けることを目標にしてみよう?俺も、頑張るから一緒に頑張ろう。」

ほっぺに500mlの水を当てられてそう言われた。

「ちゃんと水分も摂るんだよ。倒れちゃうから。」

「はい。」

水を一口だけ飲んだ。

「神代先生、こんにちは。」

車椅子に乗った男性が神代先生に声をかけた。

「え、この子は?めっちゃ可愛い!」

「新人さんをナンパしないの。」

「すみません、可愛い女の子がいると話しかけずにはいられなくなるんですよ。」

「まったく。ほら、行かなくていいのか?担当の先生待ってるよ?」

「あ、やっべ!またね。」

手を振られてから、その人は食事のリハビリに戻った。

「先生、さっきの人どこが悪いの?」

「あぁ、あの人は脳梗塞で左下半身に麻痺が残ってね。嚥下のリハビリと運動のリハビリの両手をやってるんだ。」

「そうなんだ…。」

みんな、昔のように生活ができることを目標に頑張ってる。
私だけ、妥協なんかできない。

その思いが私の体を動かした。

「はるちゃん?」

「神代先生、リハビリしましょう?」

「無理しなくていいんだよ?まだ休んでな。」


「私だけ休めません。ここにいる人たちはみんな頑張ってるから。」

「はるちゃんは優しいんだね。」

神代先生が優しく微笑んでくれた。

「よし、はるちゃんが頑張ってくれるなら俺も頑張らないとね!」

「先生、ありがとうございます。」

「ゆっくり歩いてみようか。」

それから私はお昼までリハビリを始めた。

さすがに、久々に歩いて疲れた。

でも、なんとか歩行器を使ってなら歩けるようになった。

私は、リハビリ室から出てナースステーションの前の椅子に座ってぐったりしていた。

そんな私を見かねた近藤さんが来てくれた。

「遥香ちゃん、大丈夫?」

「ちょっと疲れちゃった…」

「そっか。ここで待ってるように言われた?」

「尊に、気分転換にここにいるように言われた。」

「そうだね、ずっと横になってると褥瘡が出来ちゃうからね。」

「褥瘡?」

「簡単に言うと、床ずれみたいなものよ。でも、遥香ちゃんは毎回できないから心配しなくていいよ。」

「そうだね。」

「もう少しここにいる?」

「うん。」

「眠くなったら、病室に戻るんだよ?」

「はーい。」

そう言われながらも、いつのまにか近藤さんに点滴を繋がれていた。

何となく予想してたけどね。
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