あなたのそばにいたいから
第5章
仕事の方も私の渡米が近くなり、
退職のための引き継も始まったこともあり、忙しくなった。

合間を縫って、トモのお義母さんから
トモの好きなだし巻き玉子の作り方や
小林家風煮込みハンバーグの作り方を教わった。

お義母さんの煮込みハンバーグは、
普通は添え物に使うニンジンもデミグラスソースで煮て、盛り付けに使う。
ハンバーグは煮込んでもかたくならないように、
玉ねぎやピーマン、ナスを細かく切ってバターで炒めたものを
肉とよく合わせていたのが特徴的だった。
早くトモの前で作りたいと思いながら練習のつもりで何度も作った。


8月もあと5日で終わるというこの日、トモとスカイプで話した。

「もうすぐユウに会えるんだな。」

「うん。トモの誕生日が9月17日でしょ。
前日の16日にはアメリカに入る予定。
現地の時間で15:30くらいに空港に着く便で行くね。
あとで正式な時間メールするね。」

「あぁ、わかった。必ず迎えに行くよ。」

「私の休みが決まらなくて、ハラハラさせてごめんね。」

「あぁ、俺もユウの仕事を理解しているつもりだったのに、
会いたくて、会いたくて何度も聞いてごめんな。」

「ううん。会いたいのは私も一緒。」

「ところでユウ、俺に内緒にしていることがあるだろう?」

トモにそう言われてドキッとした。
もしかして、秀斗くん、ばらしちゃったとか?
三枝先輩とかうちの部署の人が
トモが手掛けた商品のアメリカでの販売の話をしたとか?

「えっ、何のこと?」

後ろめたい私の声がうわずる。
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