あなたのそばにいたいから
第7章
トモと二人でトモのアパートに戻った。
部屋に入るとすぐにトモに抱きしめられた。

ずっと味わいたかった彼の腕の中。

そして、彼は私の耳元で

「シュウの家で会ったときから、抱きしめたかった。
でも、何で?」

そうつぶやく。たぶん、私の突然の登場に対してだ。
これから事情聴取がはじまる。

トモは抱きしめていた腕をほどき、
私をリビングに座らせ、隣に座った。

「私ね、マザーヘルパー社、辞めたの。」

「会社、辞めた?」

「うん。マザーヘルパー社と無関係になったわけじゃないんだけど。」

「どうして、お前、あんなに頑張っていたじゃないか。」

「うん。仕事は嫌いじゃない。むしろ好き。
でも、それよりトモの方が好きなの。
スカイプで話をしていても、寂しかった。」

「それは、俺だって。
でも、仕事を辞めることと遠距離恋愛は別だろ?
それにユウは遠距離恋愛経験者じゃないか。」

「うん。トモが私を不安にさせないように、
婚姻届を用意しておいてくれたり、スカイプで連絡を取り合ったり、
私のことを思ってくれているのは十分にわかっている。
最初、私も自分がこんなに不安になるなんて考えなかった。
トモが言うように遠距離恋愛を経験してきているし…。
でも私の『想い』が違うの。前の遠恋では、トモがいてくれたから、
さみしさなんて感じていなかったんだと思う。
なんだか、だんだん自分が自分じゃないみたいになって…」

「スカイプで話しているときはそうは見えなかったけど。」

「だって、トモに余計な心配かけさせたくなかったから…。
トモがアメリカに行って3週間くらい経ったあたりかな。
トモが行ったばかりのときは、
トモの作り上げた商品をみんなに知ってもらいたくって、
私もトモと立場は違うけど、
自分なりにトモを応援したいという気持ちが強くて、
そんなにさみしくなかったの。
でも、その仕事はもう広報ではあまり関係なくなって、
営業が頑張る分野になってしまったら、
トモとの仕事でのつながりがなくなってしまったような気がして、
不安になってきたの。
最初は愚痴を聞いてもらうくらいのつもりで
三枝先輩に私の気持ちを話したの。」
< 38 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop