偽りのヒーロー



「知ってるか……。最近の男子高校生はな、菓子折り持って謝罪に来るんだ。一人前の立派な男みたいにさあ……。俺、娘さんをくださいって言われるのかと思ったよ……」

「ああ……」

「何、お前知ってたのか!? 教えてくれてもいいだろ!」

「そんな話は飲みの席でやってくださいよ……」



 もはや、生徒の三者面談だとは思えないその話の流れを、加藤は断ち切った。

はあ、と呆れたようなため息をつくと、目の前の人物が、笑みを浮かべている。



「それじゃあ今度飲みに行こう。子供の自慢話を聞いてくれ。そのときに、お前の話も聞かせてくれよ。ついでにな」

「ついでに、ですか……。そうですね」

「約束だぞ。菜子の担任じゃなくなったらな。たくさん話聞いてくれ、な」



 いつまでたっても先生のままだ。その優しさにいつも救われる。

30歳をすぎても尚、この人には敵いそうにない。

にこにこと浮かべた笑みに秘められたその強さを知っている。



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