偽りのヒーロー



「たまにすぐ返信きたときびっくりするよな! アイスの当たり引いたみたくテンションあがる」



 意気揚々と話すレオに、結城は重い空気を纏っていた。

なぜならば、この一週間で菜子ととった連絡は実に7回ほど。ほぼ一日一回の連絡と、文字数にしたら100文字程度なのではないかという、もどかしいやりとりに鬱憤を溜めていた。



「何? 紫璃ってば菜子に気ぃあんの?」



 にやにやと生温い視線を送ってくるレオの足に、テーブルの下でげしげしと遠慮なく蹴りを入れる。



「……違うけど。アイツさ、変じゃね? 年頃の女が興味あるものにないってのがまずおかしい。あとハンカチ持ってんのも少数派じゃね? 潔癖かよ。こうやってわざわざ畳むのもなんか変だし……」



 そう言って、結城は空になったハンバーガーの包みを、以前菜子がしていたのを真似て四角く畳んだ。



「……なんでお前がそんな顔してんだよ」



 真っ赤になったレオの顔を、眉間に皺を寄せる結城が不思議そうに頬杖をつき目線を向ける。レオは両手で口元を覆って、女子みたいにキャッキャッと足をばたつかせる。



「だってそれ、なんかもうめっちゃ菜子のこと好きじゃんか! やべー、今すぐ菜子に言いてえ!」

「んなこと一言も言ってねえだろうが。俺が言ってるのは愚痴っつーか、その、文句だろ」

「ふぅ〜ん? 律儀にバイト先に花買いに行ってるのにぃ?」



 三日月の形になったレオの目が、茶化すような言い方と相まって憎らしく思えてくる。じろりと目つきの悪くなった結城に、名案だとばかりに明るい声が響いた。



「会えばいいじゃん、直で。バイト先行くとかー、遊ぶとか! 一昨日カラオケ行ったけどー…」

「……はあ?」




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