新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―


「じゃあ、酵素が異常って、食べ物の栄養、分解できないんですね?」



「ええ。ミルクに含まれるタンパク質や脂肪を分解できない赤ちゃんが、まれにいるわけです。


そういう赤ちゃんの場合、上手に分解できなかった栄養は、毒として体にたまったり、内臓に悪さをしたりする。


それによって、急激に体調が悪化して手遅れになったり、障害が出てしまったりするんです」



食べ物の代謝は、複雑で精密なサイクルになっている。


1ヶ所に異常があると、サイクルが上手く回らず、何かが過大になったり、別の何かが極端に不足したりする。



おかあさんのおなかの中にいるときは、へその緒を通じて、全部の代謝がうまくいくようになっている。


赤ちゃん自身が代謝異常を抱えていても、見掛け上はまったく正常なんだそうだ。



「ミルクが、毒になっ、てしまう、なら、っ、それは、危険で、すよねっ」



「歩きましょうか」



「す、すみま、せん」



まじめに話を聞いているうちに、ジョギング用の呼吸ができなくなっていた。


ぜーぜーしながら歩く私の隣で、小石川先生は実に爽やかだ。


50代にしてこのカッコよさを保ってるわけで、若いころはかなりモテたんじゃないだろうか。


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