初恋は鉄の味
カタチ

ふわふわと宙に浮くような気持ち。
なにがなんでも守りたいという強い使命感。
過去の自分にタイムスリップできるような不思議な感覚。
大事にしまっておきたい温かい胸の内。
愛の形は三者三様。
それらは決して混ざり合うことなく、ただ複雑に絡み合い、押したり引いたりを繰り返す。
聖一は火のついた初恋をやり直しつつ、昔の彼女を思い出させてくれるその娘とも恋人ごっこを楽しみ、朋子は思い出した少女の頃の気持ちを抑えられないまま表向きは大人の女であり続け、みくは父親を求めてしまう自分に必死に嘘をつきながら恋心として想いをぶつけ続けた。
誰が誰を咎めるでもなく、ただ誰もが誰かを想い、そして誰かが誰かを妬んでいた。
迫り来る嵐に気づくことなく、その船は進み続ける。
一つ屋根の下に暮らす母娘と言えども、朋子が聖一への想いを赤裸々に話して不倫を娘にほのめかすことなど到底できず、みくもまた母と同い年のそれも初恋の人を好きだなどと口にはできず、今まで通りを過ごしていた。
この日までは。
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