ハッシュハッシュ・イレイザー

 一度教室を出て、誰もいなくなるのを見計らったところで、真理は再び教室に戻ってきた。

 人が居ない教室に一歩踏み込むと、閉じ込められた空気が自分に向かって跳ね返った。

 外の雑音が、風に乗ってぼんやりと届くが、教室は音を跳ね除けて静けさを保とうとしていた。

 机や椅子、黒板といった、この教室にあるもの全てが眠りにつこうとしているように思えた。

 それらをじっくりと眺める。

 真理は誰もいない教室に一人でいるのが好きだった。

 朝の早い時間や皆が帰った後の夕方の放課後。

 始まりと終わりを一人で見ると、自分だけがこの教室を支配している気持ちになれた。

 今は、太陽の日差しが眩しい午後の昼間。

 始まりの静けさや、終わりのもの悲しさとは違う雰囲気が、真理には新鮮だった。

 一人窓辺に立ち、青い空とくっきりと浮かぶ立体感のある白い雲を目を細めて仰いでいた。

 燦然と輝く太陽に照りつけられると、自分が溶けていきそうに、肌の焼けつきを感じた。
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